構造物の使い方

構造物の使い方
アーチ:ローブリッターとフェレン ベルグ

市販の小型アーチの考え方は、先ずつるバラを、として販売されていることが多いようです。しかし枝を長く伸ばし大きく成長する品種は不向きです。

 

ではどんなバラに適性があるかというと、樹形図の樹形 5。他には樹形 12 の品種か、あるいは四季咲の系統を応用する事も考えられます。

 

しつこく繰り返しますが、アーチはつるバラを誘引する対象ではなく、人が通る空間を確保するための物。そこに軽くバラを沿わせると風景となります。庭は創意工夫を凝らす場所です。アーチもただ設置して眺めるのではなく、配置を替えたり、いじれる対象として考える方が良いと思います。

 

気の済むまで目指す線や形を追い求め、また組み替えて庭を奥深い対象にまで作り込む事が、また実に面白いのです。

 

メンテナンスフリーやローメンテナンスなんてチャン茶ら可笑しくて。だって庭はいじり回すことが楽しくて造るものなんでしょう。アーチも心ゆくまで組み替え形を試してみたいものです。

 

オベリスクは形を見るもので、つるバラを咲かせる対象として不満が残ります。特に高さの低いものは存在意義さえ疑られています。使いこなすには、単独で用いる場合はアイキャッチ的に庭の点景として用います。無論、つるバラは絡めません。

 

大きなオベリスク、2m 付近の高さが有れば、オールドローズの枝の細い品種が使えます。これより伸長力の強い品種、例えばブルボン クイーンジプシー ボーイのクラスになると枝が伸びすぎて不向きです。

 

オベリスクは他の構造物と連携した形で用いて効果を得る様な考えもあります。大きな高さのあるオベリスクはトレリスと組み合わせる事で、ツルバラの枝の使いこなしは随分と楽になります。小さなオベリスクは使いこなす必要もあらへんと考えれば気が楽です。トレリスの終点を位置決めする役割的な感じで使う事も考えられます。

 

庭でのつるバラの使い方は、シュートの伸長具合とシュート保護の方法を基準に品種決定がなされます。理想は構造物の助けを借りず、伸びた枝を誘引して姿を作り、花を咲かせる事であると思います。そのため剪定を強く施し姿を作るケースも有るようですが。

 

つるバラの姿を整える場合、強い剪定を施す事は枝の伸長と相反する行為であるように思います。強い剪定を施すことは伸びた枝を否定すること、それなら始めから四季咲品種を用いれば良いことです。

 

シュートや伸びた枝に強い剪定を加えることはツルバラを植える意味を全く感じられない行為と言うほかありません。

 

つるバラは伸びた枝を活かして初めて結果を手にすることができます。開花後のシュートの保護が結果へと導きます。構造物もつるバラの枝の伸長とその枝への開花習性に基づいた構造物を用意する事がつるバラの庭造りには欠かせません。

 

枝の特徴を活かす構造物を作る事は、従来庭の定番的存在であった構造物との決別を意味します。発想が異なるのです。構造物は枝を誘引して開花を鑑賞するだけのスタイルから、つるバラの生長に併せて自由に創造的に使って楽しむ方式へ、大きくシフトして行く事の表れでもあります。

 

年間を通して生長を助長し、結果を翌年に引き継ぐ牽引力となるのが構造物の持つ役割だと思うのです。

 

オベリスクを例にすると、その形状は枝の伸長に対してそぐわない場合が多く、開花後にシュートの保護に困惑することが多いのです。

 

本園オリジナルの一人用ガゼボは、伸びた枝を活かす為に考案した製品です。見る対象から使う対象へと、人がバラと一緒になる事、今までオベリスクの設置されていた場所には人が憩う為の空間、椅子と小さなテーブルが置かれます。

構造物の使い方

庭の中心は植物ではなく人であり、植物は良き友人として、傍に佇む存在である。鑑賞を目的とした対象から使う対象に改める事を目的としています。

 

使う庭園であっても美は常に存在します。機能美や人の行為としての美、立ち居振る舞いや憩う姿。この姿勢こそが有る意味美学であると思います。家の外壁面がツルバラに適した場所であるのは、家がデザイン上大きく安定した存在であるからです。ツルバラの枝がどれほど伸びようとも家とのバランスは崩れません。

 

多くのツルバラは住宅の外壁面など広い平面などが栽培(園芸的)と鑑賞(造園的)の面から最良の場所です。庭に置かれた構造物に対して適した樹形を持つバラは、オールドローズの中の細枝性でコンパクトな姿を持つ品種に適性を見いだせます。四季咲性や花の価値観よりは必然性を優先した庭を考えましょう。

 

オールドローズはツルバラとして扱うことが多く、枝の太さや伸びる長さを考えるとスモールガーデンには適した性質を持ちます。葉の質感の柔らかさや適度な枝の伸長度合い等、庭園向きの性質を備えた品種が多くあります。

 

住宅地のスモールガーデンは機能美と人生の時間を楽しむ気持ち、この姿を庭園として投影する美学とでも言うべきものだと考えます。静寂庭園よりは人の望みの夢と今を生きる喜びと底抜けの明るさ、生き生きとした現実性を美学として昇華させたのが個人庭園の姿ではないでしょうか。

 

面白く新奇性に富み、個性的な美しさが光る庭園であります。バラ園の魅力は「園芸」と「造園」。園芸は育つ様、日々生長するダイナミックな意味合いです。一方造園は意図した姿を維持する静的な美です。

 

異なる要素の上にバランス良く作られた美学が庭園です。このバラ園の美しさに人の心意気や営みの美学を盛り込んだのが個人庭園のバラ園です。だから鑑賞庭園に倍する面白さも美しさも持ち得ます。

 

これが連続した姿、美しい街並みを持つ風景を夢見て二十数年。創造することの楽しさを人生の楽しさとして過ごすことができました。そして私の見果てぬ夢を追い求める旅は続きます。


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