四季咲きバラの鉢苗

2011 年 2 月 2 日公開

四季咲きバラの鉢苗

在る方からご連絡を頂き、改めて思い知らされたことがあります。曰く、村田はつるバラの専門家で、村田ばら園は長尺苗の専門店であるとバラ初心者には認識されている。改めて、何処でこんな事になってしまったのか。

 

四季咲きバラで古花銘花と呼ばれるハイブリッド ティーがあります。主に作出されて数十年を経て尚輝きを失わないバラ達のことです。ラ フランスから続く系譜の中に多くの品種が存在します。その中でも特に今日に伝えられている品種が古花銘花と呼ばれる品種群です。明確な基準は有りません。

 

私がこの世界に興味を持ったのは、青木正久先生の著書、世界バラの旅薔薇物語の中で語られているエピソードが素晴らしく、育種家の想いや歴史に翻弄されながらも寡黙に品種を産み出してきた育種家とバラの物語。これがが本の主な内容です。 

 

この本に魅了されて私の古花銘花収集がはじまったのです。とにかく集め、咲かせて見たい。つるバラと異なり四季咲きバラの美学は咲いた花そのものが育種家の美学であります。この点がつるバラと四季咲きバラでは異なるのです。

 

四季咲きバラは咲いた花に育種家の美学があり、つるバラはこの価値と共に伸びた枝を誘引して咲く姿を演出した人の美学も同居するものだと思います。咲いたつるバラの美しさは育種家への評価ではありますが忘れてはならないのは誘引をして咲かせた人間に対しての評価です。どちらにより多くの賛辞を贈るかといえばその品種を使いこなして美しい景色を創造した人により多くの評価があってしかるべきと思います。

 

つるバラは造園的色合いを強く持つ特徴があり、私がつるバラの専門家として認められている(恐らく)ことは、造園的立場からつるバラを使ったことに対しての評価であると考えます。自分にとってはつるバラの専門家と呼ばれることが最高の栄誉であると。今日まで努力した甲斐があったと自認します。

 

造園的立場からではなく園芸的な立場からバラを見るとやはり四季咲きハイブリッドティーが最も魅力的です。その中でも古花銘花に関心がどうしても向きます。四季咲きバラの美学は花そのものにあり、今は亡き育種家の描いた美学が数十年、百数十年を経て目の前で息づいている。花の素晴らしさと共にバラ作りの先達が思い描かれた世界が目の前に生きていて自分がその栽培管理を行っているのです。

 

庭の世界に存在する、過去への回帰と同種の感覚がこの古花銘花の世界に存在し、今も生きています。私はバラの世界で数十年職業人として関わりを持ってきましたが、同業者が知る私に対してのイメージは恐らく古い品種に対しての興味と収集にあったと考えられます。

 

話が横道にそれましたが、村田ばら園では四季咲きバラも鉢苗として開花した状態での販売をしています。これは農場に寒波が襲来し、強い寒さにより花が痛む葉が痛むまで続きます。これが創業以来変わらぬ村田ばら園の苗木販売スタイルです。裸苗販売の季節に開花状態の苗をお届けするため、様々に誤解や錯誤が起こりまた複数年生育させた大きな株に対しての評価もまちまちです。あらゆる状況、要望に対処すべく配慮した生産販売のスタイルですが、生産効率を無視するため、また馴染みが薄いため評価を得るまでは青息吐息で有りました。

 

鉢苗生産に対しての皆様の理解が深まりようやく専門店としての真価を発揮出来ると意欲的に取り組み、また次なる美学を目指そうと思います。

 

バラの文化とはお客様が欲した品種を栽培し、販売を通してお届けできる状態を指すと考えています。ですから可能な限り多種多様な品種を販売出来る状態を維持し、継続することが求められます。これが専門店としての村田ばら園の役割です。

 

利益が最優先ではなく、先達の残した品種を維持し次の世代へと申し送る。また人を育て世代を継続させること。これを仕事として取り組むのが専門店に課せられた役割です。無論生身の人間ですから食ってかなきゃなりません。あくまでひたむきな創造的意欲が優先し、結果として利益を得るのが専門店。どうにか両立させて継続すること。先輩から厳しく言われたことは、いくら儲けたかがその農場の価値ではなく、何十年継続しどれだけの専門職たる人間を輩出したかが農場の価値である。

 

そう、最近見放されてばかりなんです。あたしも残り僅かですから、人生最期の弟子を育ててみたいと思うのですが、バラの世界で一生を悔い無く送る覚悟を持つ人間が如何に少ないか、これをただ実感するのみであります。おおぉ~い。

 

ガーデニングブームの中で専門店が生きてゆくのは大変でした。辛かったです。バラに対する関心や尺度は雑誌に掲載された品種やお庭。これが最上の価値であり、時代の先端を走る感覚である。等々、それに栽培手法にも大きく偏があり、本来バラ栽培に必要とすべき事柄や、当然なされるべき建設的な方向性など微塵も無くただただ目先の・・・バラや庭に対しての理解は大変乏しかったと考えざるを得ません。


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